音楽感想(温)

My Favorite Songs

Crush(Floating Points)のやばさ

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😊祝フジロック出演😊

(開催されない可能性も十分あるけど...とりあえずね!)

 

2019年のアルバムの中でも5本指に入るレベルで大好きな作品、Floating PointsのCrushの私なりの大好きポイントを述べる。

(ちなみに私の2019年ベストアルバム)

(ちなみに私の2010年代ベストアルバム)

 

 

目次

 




 

 

 

 

超高級なサイバネティックワールド

 Floating Pointsの本作は、Autechreの諸作品やObjectのFlatland(2014)などのように、コンピューター内部やインターネットのデータ空間を表すようなサイバネティックワールドのイメージを着実に具現化してる音楽だと思う。ビートが精密に繰り出されるハウス・テクノの音楽性はもちろん、システムを動作させるためだけに稼働するような電気信号の効果音を多用するテクニックなど。それだけでなく、あてもなく宙を彷徨うようなメロディーのミステリアスや、人情が欠如した無感覚を感じさせる全体の冷たい感触など、動物的で自然的なものが排除されたメカトロニクスの世界観がよく表現されていると思う。本作Crushは、Falaise(M1)やSea-Watch(M10)のような生楽器系のメロディーを強調したトラックも含め、そのサイバネティックワールドを超充実したスケールで描いているところが本当に魅力的だと思う。音響的にも細部までその世界観をこだわりぬいた完成度、自分が今存在している生の現実世界を忘れてしまうくらい、サイバネティックワールド感がとても濃い作品だと思う。

そういったサイバネティックワールドの創造としてのすごさ以上にFloating Pointsの本作がもっと特別なのは、そのワールドを構成するサウンドの一つ一つの質感がめちゃくちゃ高級だというところ...!!。艶やかなコーティングをされたようにとても滑らかなタッチとか、不純物が一切含まれてないような特上の透明感とか、電気信号のアナログ感やメカトロニクスのニュアンスを失わずに高級感を実現してて本当に素晴らしい。何より、それらが質感的に高級という以上に、自然的なものや人間性などもサイバネティクスで完璧に再現してしまうような"最先端テクノロジー的センス"があるところが本当にすごい 笑。例を挙げると、Anasickmodular(M3)のバッキングのストリングス、アトモスフェリックで自然的な音像などがそう。疑似的に完璧に自然的なものを再現してしまうサイバネティック精度。そういった最先端テクノロジー的センスなども含めて、総合的に音楽がSF映画のような未来的ワールドのリアリティをめちゃくちゃ持ってる感じがする。他のエレクトロニカ作品もなかなか敵わないような高級感と未来的世界観だと思う。

 

サイエンスの過剰な発達、ヒューマニティの消滅

 自然的なものすらサイバネティクスで表現してしまうようなFloating Pointsの未来的なワールドは、今後サイエンスが過剰に発達した近い将来をイメージさせる世界観を持っていると思う。ここでいうサイエンスの過剰な発達とは、例えば実空間と見分けがつかないVRとか、夜空の星々のリアリティに鈍感になってしまうほどレベルが高い立体視プラネタリウムとか、そういった類のもの。テクノロジーの発達による世界への貢献は巨大なものだと思うけど、今後それらの発達によって、今私たちが感じてるリアリティがどんどん変化していくような気がする。高度に学習された人工知能は本物の人間との区別がつかなくなるだろうし、それによってもしかしたら"ヒト"という動物らしさがどんどん排除されて、私たちにとって最も大切な感情や心といったヒューマニティがある意味消滅してしまうのかもしれないし。私的には、本作のCrushが醸し出すサイバネティクスの"無感覚の冷たい感触"というところに、ものすごくそのニュアンスを感じた。疑似的に完璧に自然的なものを再現してしまうサイバネティックのテクノロジー、それによって今私たちが感じている自分自身の本物のヒューマニティが消滅してしまうということ。そんな風な捉え方をしたらこの作品のワールドに対する現実味がとても濃くなって、感動がものすごく強大になった。鑑賞しばらく呆然としてしまうくらい、本当に強いインパクトがある作品だと思う。

 

ヒューマニティが消滅するその瞬間!ベストトラック「Falaise」

 「超高級なサイバネティックワールドの創造」、「ヒューマニティが消滅する現実味」など、もうとてもとても素晴らしい作品。その中で私が特に素晴らしすぎてたまらないと思うところは、「ヒューマニティの消滅」というその瞬間を1曲目のFalaiseで提示しているというところ...!!!!泣。これが本当に素晴らしすぎてやばい。あまりに素晴らしすぎて何度聴いても目ん玉がぶち壊れそうなくらい感動する。

本トラックは今作の中でフルートやストリングスなどの生楽器の存在感が最も強調されてる曲で、Last Bloom(M2)から始まる本題のサイバネティックワールドの入口として用意されている。高級感のあるエレクトロニカというよりも生楽器の"生感"やヒューマニティとしての感覚がまだ多く残されているのに、それらが粉々に消滅していくところが本当に素晴らしい。消えてなくなる最後の最後まで感情は燃え続け、必死に生き続けようとする。感情の消滅をとても見事に表現したフルートの葛藤が本当にやばくって、初めて聴いたときは心臓が潰れそうになるほど感動した。「私はもう死ぬんだ」、「私の感覚は今ここで全て消滅するんだ」、自分の神経の生の感覚が徐々になくなっていく圧倒的なリアリティ。サイバネティックワールドに入る前、ヒューマニティが完全に消滅するその瞬間だからこそ、自分の命がいかに美しいかを実感できるような部分があると思う。そしてその後のサイバネティックワールドへの没頭性も高くなる。アルバムのストーリー性という点でも本当に見事だし、ストーリー性とか以前にこの1曲だけでも本当に本当に最高。

 

サイバネティックワールドのその先へ「Sea-Watch

 まだまだ素晴らしいFloating PointsのCrush、サイバネティックワールドの向こう側に用意されている10曲目のSea-Watchも本当にやばすぎる。

ヒューマニティを徹底的に破壊し、完全なるサイバネティックワールドを存分に展開した後に辿り着く新たな境地。音が無重力空間の中で永遠に響き続けるような音響空間があって、まるで宇宙旅行のようなずっと遠い場所を感じさせるような壮大な果てしなさがある。(実際コスミックな音像とかSF宇宙映画を連想しやすい。)これまでに蓄積されていたサイバネティックワールドの履歴を持って辿り着くという効果もあって、無情な悲しみの奥深さが半端ないものになるから感動のスケールが桁違いに大きい。「ヒューマニティの消滅」、「サイバネティックワールドの創造」、その後にまだアルバムの奥行が用意されているというのがもう...笑。ほんと、頭おかしいくらい内容密度の濃いアルバムだと思う。

 

リアリティの高い死の体験、命の評価

 音楽という芸術媒体は、映画や美術といった他の芸術とは異なり、知識が全くなくても感情にダイレクトに作用する力を秘めていると思う。(音楽以外の芸術は知識がないとよさを実感できない作品が多い気がする。)つまり音楽は、ある感情体験を実現するためにはとても優れたツールであるということ。普段生きてて命が尽きるときの具体的なイメージを持つことなどは難しすぎてできないし、またそのときの感覚を想像することなども私はほとんど不可能だと思っている。でもFloating Pointsが本作の1曲目Falaiseで成し遂げたヒューマニティの完全消滅の感覚は、この上ないほどリアリティが高い死の体験の一つであると思う。身体の神経が全て一つ一つ消滅していくその瞬間、どれだけ痛くて、どれだけ悲しくて、どれだけ恐ろしいか。その瞬間、普段の日常では認識することができない自分自身の命の価値を評価できる。「自分の命がいかに生きているか」ということを叩き込まれるような、本当に鑑賞価値の高いアルバムだと思う。

 

その他の大好きポイント

  フィジカルに添付されてるBirthのスコアが最高すぎてやばい 笑。

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Floating PointsことSam Shepherd氏のサイン入りの生スコア。本当に手書きで作られてるマジもののスコアで、大好きなFloating Pointsの音楽の存在感のリアリティがめちゃくちゃ感じられるから超テンション上がる 笑。スコアを見ながらだとメロディーの味わいがもっと極上になるし、アーティストの意思を解読するようなおもしろさもあって本当に楽しい。(私は昔オーケストラの学生指揮者だったからスコア見ながらめっちゃ音楽聴いてた。)クラシック系のアーティストだとKelly Moranとか本当に大好きなのだけど、こういうスコア作ってほしいなと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

フジロック行きたすぎるよね

(ダメなら仕方ない、、、、、、)