「SJ氏プレイリストのベストソングTOP15」感想
私を洋楽の沼に引きずり込んだ第一人者であるSJ氏のプレイリスト(2019年4月~2020年2月)の中から、特に大好きなもの15曲をピックアップ。ランキング形式で感想を添えながら表明する
(全て邦楽!)
15. Spangle call Lilli line - "normal star"
Album : Spangle call Lilli line (2001)
まずとても惹かれたのは、「くるり、SUPERCAR、Number Girlといった"97年世代"に着実なJ-Rock主義を感じる」というところ。その音楽性は例えるなら、商業的な成功を全く顧みず、感情表現や現実逃避などに対して理想を真剣に追求した音楽のこと。優しくソフトな感触のクリーントーンで奏でられるギターの綺麗なアルペジオなど、無駄を排除したシンプルなサウンドだけでめちゃくちゃ満たされるように、理想を真剣に追求したその精神が音楽の完成度によく表れてると思う。
純粋に00年代の和性ポストロックとしても最高。和性ロック特有の清楚で美しい響きが一般的なロックを超越した"ポスト"ロックのサウンドとして表現されているということ。言い換えればそれは、常に進化する"ロック"の最前線としてのサウンドということだし、そう考えるとめちゃくちゃ最強な音楽だなと思う。一曲6分越えという充実したスケールもよい。個人的に00年代の和性インディーロックバンドは全然知らないので、このバンドを知れてよかった。
14. Special Favorite Music - "Ceremony"
Album : Royal Blue (2017)
欠点のない無敵のフィーリングを実現した傑作トラック 笑。最大の魅力はなんといってもオーケストレーションを組み込んだバンド編成の充実。テンションを高めるようなパーティーソング系のアプローチがありながら、フルートやストリングスを強調した丁寧で上品な仕上がりを常にキープしている感じ。ウキウキするような楽しさと優しくて温かいフィーリングの両方を絶妙に調和してると思う。心の余裕を作り出すような究極的に満たされたフィーリングを実現していて、本当に素晴らしい。
世界的に見ても、チルアウトなR&Bなどのオシャレ系音楽の幅がとても広くなったなと思う。Ceremonyに関しても、オーケストレーションを含んだ楽曲のオシャレ感という点ではそのトレンドにめちゃマッチする作品だと思うし、何より完成度が本当に高い。アニメのエンディングとかTVCMとかで起用されたらめっちゃいいのになぁと思う。
13. EVISBEATS - "Lullaby feat. WHALE TALX & annie the clumsy"
Album : HOLIDAY (2018)
「初めて正真正銘のチルアウトを聴いたかもしれない」という衝撃的な感動に襲われた 笑。チルアウトの音楽自体は認知しているし、洋楽で何枚か作品も持っているけど、ここまでR&Bのスローテンポなグルーヴ感のチルさがハマってる音楽は初めて聴いた 笑。楽曲の全体的なサウンドスケープのポカポカ感もめちゃくちゃチルい。これは、ドリームポップ、シューゲイザー、サイケデリックロックなど、今まで聴いていた極上のエクスタシーを得るドラッグ作用系の音楽にどこにも属さない、私にとって全く新しい快感。初めて聴いたときはバイト帰りの車の中だったけど、ほどよく疲れてたからコンディション的にもめちゃくちゃ最高だったと思う 笑。
自分の周りの音楽好きな友達はみんなヒップホップ~R&B系を守備範囲としている。なかなか自分が好きなロックの話とかできないのだけど、ELVISBEATSの本トラックは積極的に普及できそう 笑。
12. シャムキャッツ - "AFTER HOURS"
Album : AFTER HOURS (2014)
シャムキャッツの中で好きなものを選ぼうと思ったとき、最も印象的だったのがこれだったので、これの感想を書く。
シャムキャッツは、"とりとめのない日常感"をよく表現できるバンドだと思う。でもそれはただの無感覚な退屈ではなく、平常的でノーマルなのにさりげなく素敵なフィーリングが含まれた感じ。日常に幻想を混ぜ込んだような、ほんの少しドリーミーな音像とかにそういうものを感じる。それはいうなれば、毎日を繰り返し過ごす中で時々めちゃくちゃ欲しくなるような理想的な瞬間だと思うのだけど、シャムキャッツはそういうものを切り取って音楽化するのがとても上手なバンドなんだと思う。そういう点で言えば、自分が聴いてない作品含めてどの楽曲も素晴らしいと思うのだけど、そういう"さりげない素敵な日常感"を最大限発揮したようなAFTER HOURSのジャケット、本当に最高だと思う 笑。私が思うシャムキャッツのよさが、もうそこに全て説明されている感じがする。毎日の全てを素敵に見せるシャムキャッツの日常感。
今度フジロックとかで晴れたお昼の野外ステージで見れたらいいなー
11. People In The Box - "ダンス、ダンス、ダンス"
Album : Ave Materia
People In The Boxで一番聴いてる曲。神秘的な存在感を放つような開放的なメロディーや、ワルツのような舞い方をする美しいリズムなど、独創的で新しいオルタネイティブロックとしてのよさだけでなく、ロックだけでは生み出せないクラシック的な美的センスがあったり。それはまるで、音楽という枠組みの中で挑戦したモダンアート作品のよう。丁寧に設計されたようなエフェクト感や、多面的な解釈が楽しめる波多野氏のリリックなど、全ての部分において鑑賞密度の高い一芸術としてとても優れた作品になっていると思う。
この曲で最も好きなところは、音楽が提示する「ひとり なかよく踊りましょう」といったメッセージ。芸術が創造した大いなるワールドの一員となることが作品鑑賞の醍醐味であると思うのだけど、この曲の提案のように、パーソナルで充実したワールドを満喫するということは、何にも堪えがたいとっておきの特別感があると思う。そしてそのこの上ない感動が、そういったとっておきの"孤独"が、「世界を救うかもしれない」のだ。
...めっちゃ素敵やん...!
10. ミツメ - "怪物"
Album : mitsume (2014)
ミツメで最も印象的な曲がこれ。浮遊感が溢れるドリーミーな世界観、一度聴いたらずっと耳に残るようなギターの鳴き声、曲に調和しながらも少し不気味にうねるようなベースラインなど、気持ち悪いくらい記憶にこびりつく凄まじい存在感がある。そこには現実に反抗しようとするロックの本質的なものがあってとても好感が持てる。楽曲中盤以降のノイジーなギターソロのパフォーマンスも本当に素晴らしい。
この曲の凄まじい存在感は、同時にとてもミステリアスな感触を残している。そしてそのインパクトのある音楽体験は、聴いた当時の感情を深く記録する「音楽思い出効果」としての役割を強力に担っていると思う。私の場合この曲は、SJ氏のおすすめとして渡された思い出として強く印象に残っている。これからこの曲を再生する度、そのときの記憶とミステリアスな感触が入り混じったような、魅力に満ちた不思議な感覚を永遠に味わうのだろう。
9. 中村一義 - "いつだってそうさ"
Album : 100s (2002)
気分が落ち込んでいるときに聴くと励まして寄り添ってくれるようなポップチューンにめちゃくちゃ弱い。R&Bのような躍動的でエネルギッシュな楽しいグルーヴでありながら、飾りすぎないサウンドデザインを保った清々しくてフレッシュな雰囲気の感じ。「いつだってそうさ」というキャッチフレーズにも、そういったフィーリングがよく発揮されていると思う。幸せを増幅させたいときでも、少し寂しくて元気がないときにも聴けるような、とても有用性の高い音楽だと思う。
特に好きなのが、「誰かに出会った?」「そんであなたに出会った」という歌詞のように、人との出会いについて歌ったロマンチックなセンスがあるところ。人肌恋しい気持ちが煽られるような、切なくも素敵なフィーリングが搔き立てられる。新社会人で新しい出会いに期待する今の時期は特にそう 笑。春にいっぱい聴きたいです。
8. Sweet Williamと青葉市子 - "からかひ"
Album : からかひ - Single (2018)
青葉市子は誰ともコラボしないソロの状態でも常に最高なのだけど、OvallとコラボしたYura Yura feat. Ichiko Aoba(2013)など、伴奏隊やビートメイカーをプラスした編成も本当に最高だと思う。大和撫子の概念を具現化したような日本の美しい自然的なヴィジョンを彷彿させる青葉市子の作家性を失わず、楽曲のダイナミクスをより増強させたような感じ。Sweet Wiliamの本トラックの場合、必要最低限に抑えたバッキングデザインや、虫の鳴き声をサンプリングした自然的なヴィジョンなど、青葉市子の音楽性にとてもマッチしていると思う。それは言い換えれば、シンプルすぎるが故に生じた青葉市子の切なすぎる音楽性の弱点を克服したものともいえると思う。相性がめちゃくちゃバッチリな組み合わせで本当に素晴らしい。
今思えばこれが初めての青葉市子だったし、あの頃が懐かしい。青葉市子について少し補足をしておくと、ピンク色のジャケットが特徴的なアルバム「0」は、2013年におけるマイ・ベストアルバム25位圏内だよ。
7. COALTAR OF THE DEEPERS - "HALF LIFE"
Album : HALF LIFE - Single (2019)
本当にかっこよすぎてめちゃくちゃ感動した。ノイジーで轟音なシューゲイザーの迫力を利用しながらガンガン攻めていくロックの感じ、シンプルに大好きすぎる 笑。メロディーの発想もとても洋楽感があって、まるで90s~00sに流行ったインディーUKロックに似た趣を感じられる。サブスクリプションのランキングで上位に見られるような一般的なメインストリームのロックバンドよりも100億倍大好き 笑。こんなにインディー感の濃いロックソングを国内で見つけられたのが本当に嬉しい。
この曲が何より素晴らしいのは、曇ったギターサウンドを強調したようなローファイ感を取り入れたというところ。洋楽でも60年代くらいの古いサウンドを真似した安っぽいローファイロックの作品はたくさんあるけど、ローファイを利用してここまで曇った音像の"陰鬱なかっこよさ"を強調した作品は出会ったことがない!すごい!2010年代の終わりでこんな新発想のロックがあったなんて!笑。2020年代の新しいロックの未来が少し見えてきた感じがする。今後のロックシーンにも期待だ。
6. 蓮沼執太フィル - "Earphone&Headphone in my Head - PLAY0"
Album : 時が奏でる (2013)
心躍るような満たされるポップソングでありながらオーケストレーションのインストゥルメンタルでもあり、充実感の半端ない最強の音楽だと思う 笑。系統でいえば14位で述べたSpecial Favorite Musicの音楽性と類似しているのだけど、Special Favorite Musicよりもオーケストレーションの規模が拡大した感じで、メロディーの掛け合いなどの多様性がもっと壮大になっていて、音楽を奏でる基本的なアンサンブルの喜びがめちゃくちゃ巨大になっていると思う。そしてそのオーケストラとしての存在感が強くなったことから、清潔で上品なオーラもより強力になってたり。豊かで美しい最高のポップ・オーケストラだと思う。
蓮沼執太フィルの本作でとても好きなところは、リスナーがそれぞれ物語を想像できるようなインストゥルメンタルとしての充実があるというところ。メロディーのパターンも数多く、色々なシーンで色々なストーリーを想像できるインストならではの自由度がある。その域はもはやクラシック音楽のレベルであるかもしれないけど、キラキラしたフィーリングを記述したそれはしっかりポップでもあり、本当に贅沢な一曲だなーと思う。
5. Chouchou - "1619khz"
Album : Night And Wanderer (2017)
新しい音楽を追いかけるモチベーションは、「今までに聴いたことのタイプの音楽に出会いたい」という部分が大きい。Chouchouの本トラックに関してはまさにその感じ、今まで全く出会ったことがなくてゾクゾクするようにテンションが上がった。
純粋に、2010年代に栄えたEDM系の太くて厚いエレクトロニックのサウンドや、暗闇を演出するようなダークな深みのあるハウスミュージックとしてめちゃくちゃかっこいい。今作が本当に最高なのは、その音楽が交通状況をお知らせするラジオのBGMとして設定されているというところ...!!ラジオ的にはありえそうだけど、そこに人間の悲しみや苦痛を反映したような意味深なリリックを組み込んだり、ストーリー性のある音楽としてはめちゃくちゃ新しい!現実感と非現実感の入り混じった最高にスペシャルな作品に仕上がってると思う。
アイディアのレベルとしてはもはやコンテンポラリーアートの域に達してると思う。今までの邦楽感が全くないという点でも本当にゾクゾクした。
4. 片想い - "party kill me (パーティーに殺される!)"
Album : QUIERO V.I.P. (2016)
片想いの特徴的なところは、賑やかでフレンドリーなバンドのアンサンブルと、そこから滲み出るメンバー達のめちゃくちゃ仲良しな空気感。片想いの人達が、みんなで一緒に音楽を演奏することが本当に楽しいと思っているのがめちゃくちゃ伝わる。このparty kill meは、そういった片想いの楽しいアンサンブルイズムが、とても切なく愛おしい感情に作用しまくる曲。それは、"死にそうになるほどここにいたい"と思わせるような喜びだったり、"どうなっちゃってもいいから音楽を止めないで"というほど愛おしい音楽愛だったり。正直、この歌詞ずるすぎると思う 笑。こんなの最高すぎるに決まってるじゃん...笑。
音楽を鑑賞することは、その音楽が創造するワールドの一員となることだけど、片想いの音源鑑賞の場合、片想いのメンバーたちが演奏しているその場の空間にトリップし、片想いの人達と一緒に楽しく交流するようなイメージを得ることができると思う。この曲では特に、片想いの人達の「音楽が本当に好き」というそのリアリティを生で感じてしまうので、思わず泣きそうになってしまう。
2019年のサヨナラもめちゃくちゃよかった。
3. ザ・なつやすみバンド - "ラプソディー"
Album : パラード (2015)
6分20秒の中で繰り広げられるストーリー性のクオリティが本当にやばい。楽曲の展開の中に起承転結をしっかり持っているし、バンドがある程度の大きいスケールを持っているというのもあって、一つの楽曲としての充実度が本当に高いと思う。
何もない空間から一つずつ音が生まれるような始まりから、徐々に意識を覚ましつつ、謎めいたな空間をふわふわ彷徨っていく。そして突如、今まで不明瞭だったものが明らかになるような境地に達し、みなぎるエネルギーを糧に飛び立つように加速していく...。この、「何かの境地に達して、加速して飛び立つ」というようなザ・なつやすみバンドのニュアンスが本当にめちゃくちゃ大好きなのだけど、そこには、自由を獲得したときの最高に開放的な喜びの瞬間があるわけだし、本当に素晴らしいと思う。
音楽に身を任せて自分の感情を時間変化させていくのって本当に楽しいと思うのだけど、自由で開放的なゴールがあるこの曲はそれ以上に、自分の生命を祝福するような、とてつもない喜びの瞬間が含まれていると思う。何度聴いてもめちゃくちゃ感動する。
2. 吉澤嘉代子 - "えらばれし子供たちの密話"
Album : 屋根裏獣 (2017)
おとぎ話や絵本のような設定の世界観の中で、ソウルフルな吉澤嘉代子の歌がこれでもかというほど炸裂している。そこには、苦しみを全て無にするようなR&B・ソウルに匹敵するほどの音楽への没頭があると思う。聴くと心のときめきが最大限になって爆発してしまいそうになるほどエモーショナルで、本当にめちゃくちゃ魅了される。吉澤嘉代子のキュートな歌声が溢れ出るエモーションに従って自在に変化する様子も本当に素晴らしい。
ただでさえ前半パートでそれなのに、中盤以降の転調の展開を機にエモーションがさらに過激化するから本当にやばい。下手してしまうと、あまりのエモーションに自分の感情がバカになって人間が壊れそうになってしまう。聴く度に「いつまでも続いてほしい」と思うほど最高なのだけど、「おやすみ」ってぶった切られてしまうので、結局リピートが止まらなくなるという...笑。
先月公開されたバカリズム原作の「架空OL日記」という映画、今年ベスト級に本当に面白かった。主題歌の吉澤嘉代子の「月曜日戦争」も本当に最高だった。
1. 平賀さち枝とホームカミングス - "白い光の朝に"
Album : 白い光の朝に - EP (2014)
人生ベスト級に大・大・大好きな曲で、この曲が所持するヴィジョンやフィーリングを常に持って生きていたいと思う。とにかく最高なのは、「無邪気すぎる超絶に可愛い平賀さち枝の歌要素と、光り輝くホームカミングスのバッキングの最強のマッチング」、そして、「憂鬱な気分を全て消滅させるような"白い光の朝"という世界観設定」の組み合わせ...!!はーもう神かよ!!とツッコミを入れてしまいたくなるくらい最強すぎて本当にやばい 笑。憂鬱な気持ちを徹底的に消滅させるような音楽のリアリティが本当に最強すぎるし、毎日このフィーリングを心に抱えていきたいと思うほどその感情を愛してる。本当に神がかったセンス。
平賀さち枝の歌要素も最高すぎるのだけど、伴奏隊のホームカミングスもその平賀さち枝のセンスに引っ張られて可愛さを増しているような感じがするのがまた大好き。具体的には、従来のHomecomingsの音源のときよりも子供らしいニュアンスがより強調された畳野彩加氏の歌声などがそう。そういった平賀さち枝的ホームカミングスのセンスが本当にツボだし、平賀さち枝って本当にめちゃくちゃ最高だなと思った。
思い焦がれるようなエモーションがめちゃくちゃ搔き立てられる歌詞の内容も本当にたまらない。とても愛おしい内容の歌詞なのに、平賀さち枝が歌うからまた別な愛おしさが発生するんだよね...笑。自分目線でも平賀さち枝目線でもダブルで楽しめる。本当、この曲最高な部分しかない...笑。
あとがき
🍎プレイリスト↓